ここは三年生の教室。
授業が終わってすっかり閑散とした教室には、ここのクラスメイトである高月とフェアがいた。机を寄せて向かい合って弁当を食べている。弁当は手作りのようだ。
「それでですねー」
「あはは」
漫談を楽しみながら会食する二人。
二人は生徒会と風紀委員会を運営する重要な人物であるため、昼休みは貴重な休憩時間だ。
しかし、この日に限って、二人に悪夢が襲い掛かった。
「そういえばですね……!?」
何かを言おうとした高月の表情が凍りつく。彼女の視線はフェアの肩に集中する。
「どうしたの?」
高月の視線の先にあるものに気づかないフェアは首を傾げるのみ。高月は慌てて首を振る。
「な、何でもないです!」
その後もフェアは頭に疑問符を浮かべていたが、すぐに食事に戻っていった。
思わず胸を撫で下ろす高月。
……言えるはずがなかった。
何で教室の中に毛虫がとか、何でよりによって彼女の肩に上ったのかとか、何で本人は気づかないのとか、高月はどれから突っ込めばいいのか、いやそもそも突っ込んでいいのかどうかという時点で迷っていた。
フェアが毛虫嫌いということは高月も知っている。現時点でこの事実を知らせたら暴走は必至だ。
「…………」
しかし、毛虫を発見してからの高月は口数が減ってしまい、昼食にも集中しにくくなってしまった。
一方、フェアは毛虫の存在に全く気づかないまま食事に徹する。
毛虫はというと、苦労して登った甲斐があったといわんばかりに周囲を見渡し、しかしまだ頭のてっぺんがあることに気づいたのか、彼女の首元ににじり寄る。
「ぶっ……!」
それを目の当たりにした高月は、盛大に飲んでいたお茶を噴く。
「ど、どうしたの?」
一人で勝手に取り乱す高月に何事かとフェアが尋ねる。
むせながらも高月は考えた。今更言ったところで結果は同じなのだろうと。いや、いま言えば毛虫がフェアに直に触れることはないからそれだけでも回避させなければと。
意を決して、彼女の肩を指差す。
「ん?」
そして、フェアは見た。
自分の体をよじ登る毛虫を。
案の定叫ぶフェア。
しかし、それだけで彼女は止まらなかった。
「ちょ、フェアさん!騎士剣は仕舞ってください!ていうかどこから出したんですかその剣!きゃっ!ふ、振り回さないで下さい!落ち着いてください!斬れてるの毛虫じゃなくて机や椅子ですからぁ!!!」
……この先は説明しない方がいいと思うので、この後起こるであろう惨劇の内容はご想像にお任せする。